白粉の毒について【薬屋のひとりごと】

現在放送中のアニメ【薬屋のひとりごと】

劇中で、一番初めに登場した事件は白粉おしろいの毒性だ。

なにが原因?

さて、結論から言うと、あれは水銀や鉛が原因だ。

過去の白粉には水銀や鉛を使うことで、貝殻のみを使った場合と比較し粉の肌へのなじみがよくなり、より白くなるということで昔から使用されていた。

日本では江戸時代から鉛や水銀の使われる白粉が広く普及し、それらが禁止されたのは明治24年(1935年)である。

鉛と水銀の歴史

鉛は、紀元前7000年頃から使用されていたと推測されており、自然銅や自然金に続いて、もっとも古くから人類が使用した金属の一つだ。

ローマの遺跡からは、鉛製の水道管が、まだ使用できる状態で見つかっているらしい。

日本では、奈良時代より鉛が使用され始めた。

古代ローマでは膨大な量の鉛が生産され、あらゆる場所に使用されていたため、ローマ人には鉛中毒者が続出したといわれる。

17世紀ごろから、ワインを甘くする目的で酢酸鉛が添加され、ベートーヴェンの難聴は鉛中毒が有力視されている。

1970年には、ガソリン内の鉛が非常に有害であることがわかり、無鉛化が行われた。

水銀

中国の始皇帝が水銀は不死の薬として、飲んでいたこともあるらしい。始皇帝は紀元前247年~紀元前210年まで在位していたことから、水銀の歴史は非常に長いことがわかる。

日本でも少し前までは水銀ランプや水銀温度計として身近に存在したのだが、危険性が明らかになってからはほぼすべてが使用されなくなった。

日本の水銀需要は昭和39年(1964年)をピークに急速に減少している。

ちなみに、水銀は液体の時は消化管からはほとんど吸収されず、ただ素通りするだけで、液体のままであれば毒にも薬にもならない。

しかし、水銀は20℃で気化し、気化した水銀は肺から吸収され強い毒性を示すことから、どのみち非常に危険であることには変わりない。

鉛と水銀の中毒症状

鉛中毒の典型的な症状として、下記の物があげられる。

  • 人格の変化
  • 頭痛
  • 感覚の消失
  • 脱力
  • 口内の金属味
  • 歩行協調障害
  • 食欲減退
  • 嘔吐
  • 便秘
  • けいれん性の腹痛
  • 骨や関節の痛み
  • 高血圧
  • 貧血
  • 腎臓の損傷(無症状)

幼児が鉛にさらされた場合、ぐずるようになるほか、数週間かけて注意力の持続時間が短くなり、遊びの活動が低下していく。
幼児の慢性鉛中毒は、知的障害、けいれん性疾患、攻撃的行動異常、発達対抗、慢性の腹痛、貧血を引き起こすことがある。

水銀

1960年代に発生した水俣病で知られる水銀

急性症状としては、強い中枢神経系への毒性を示すことが知られている。具体的には下記の通りだ。

  • 流涎
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢
  • 頭痛
  • 悪寒
  • しびれ
  • めまい
  • 視覚・聴覚異常

慢性的な毒性として、神経系への後遺症が広告されている。具体的には下記の通りだ。

  • 運動失調
  • 歩行異常
  • 四肢反射の異常
  • 抹消知覚障害
  • 感覚鈍麻

排出されづらい水銀は、生物濃縮によって、魚介類への蓄積が多くなる。
日本人の場合、食事経由の水銀摂取量の80%が、魚介由来だと推定されている。
食品中に含まれるメチル水銀は、消化管から95%以上吸収され、蒸気となったメチル水銀は肺から約80%吸収される。皮膚からも吸収されることがわかっているがその吸収率は明らかでない。

まとめ

現代では危険性が周知され、使用される場面の減った水銀と鉛。

【薬屋のひとりごと】に出てきた毒ははっきりとは書かれなかったが、実際に起きていたことである。

毒の知識など役に立つ状況にならないことが一番だが、なぜそうなったか、どのような危険性があるか、知っておくことは非常に重要だ。

頭の片隅にでも残り、水銀や鉛にかかわる際、どのような危険性があるかを理解した上で使ってもらえれば幸いである。

参考資料

鉛中毒に関する情報:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/25-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E9%89%9B%E4%B8%AD%E6%AF%92

水銀中毒に関する情報:https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/osen_1.pdf

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これに関して、というか薬に関しては、2022年夏のアニメ【異世界薬局】を見るのが一番なのだが、そんなことを言っては解説どころかブログにすらならないので本記事にてまとめた。
ちなみに、【異世界薬局】の原作は 小説家になろう にて掲載されており、筆者は医療関係の研究者で非常に正確な描写を行うことから、実際の医師が考証されていたりする。
異世界モノだからと言って避けている方は、ぜひ一度、読んでほしい。【異世界薬局】は医療モノとして本当に素晴らしい作品だ。

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